翻訳担当のEIKOです。
ニュージーランドにおいて、2026年8月に、16歳未満のSNS使用を禁止する法案「Online Safety (Minimum Age and Child Safety Risk Assessment) Bill 」が国会に提出されました。年齢確認技術の整備に時間を要するため段階的導入が想定されており、2027年に本格運用が開始されると予想されています。
この法案の概要は以下のとおりです。
16歳未満はアカウント作成が不可に
16歳未満は以下の対象プラットフォームで、アカウントの作成ができなくなります。
- TikTok / Instagram / Snapchat / Facebook / YouTube
- Replika / Character.AI などのソーシャルAIコンパニオン(感情的・社会的関係を模倣するAI)
- SNS機能を持つゲーム内フィード
*WhatsApp、LINEなどのメッセージング、Robloxなどのゲーム、Spotifyなどの音楽配信、LinkedInなどの職業系SNSは規制の対象外。
この法案にはログインを不可にする「アクセス遮断命令」が明記されているため、来年以降は、日本からの留学生もニュージーランド国内では、InstagramやYouTubeなど対象サービスについて、16歳未満のログインが制限される可能性があります。
重大な罰則が企業側に課せられる
プラットフォーム側で年齢確認システムを導入し、顔年齢推定、デジタルIDサービス、既存アカウント情報の照合といった、複数の方法を組み合わせて「合理的な確認」を行うことが求められるようになります。違反したプラットフォームには、最大10%のグローバル収益または最大約 4,000万NZドル(約36億円) の罰金が科される可能性がある、とされています。
この規制を回避して子供たちの利用が続くのではないかという懸念も示されています。しかし、パーソナライズされたフィードで、無限スクロールで時間を吸い上げ、反応・いいねなどのエンゲージメント指標で強い依存性を持つ存在として、SNSが青少年の行動や思考に及ぼす影響には計り知れないものがあると言えます。そして、ユーザーの情報をつかみ取り、引き付けてきたテクノロジーがあれば、規制を実効性あるものにする技術的手段も、十分に実現可能だと言えます。
1日5時間以上をオンラインに費やす子供たち
ニュージーランド社会開発省の2025年調査によると、「13–19歳の33.5%が、1日5時間以上SNSに費やしている」と報告されています。(Ministry of Social Development – Youth Health and Wellbeing Survey 2025 )
一方の日本でも、総務省の資料によると、 10〜17歳の青少年のインターネット利用時間は平均 5時間2分/日であり、 5時間以上利用している青少年は約42% と報告されています。 この「インターネット利用」には SNS・動画視聴・ゲームなどが含まれますが、 SNS利用頻度は 57〜98% と非常に高いため、 実質的に「長時間のSNS利用者が多い」と解釈できます。(青少年によるインターネット利用動向)
1日に5時間! 24時間のうち5時間を、親世代が子供だったころには存在しなかったオンラインで過ごしている若者たちは、親世代とはまったく異なるコミュニケーションと時間の感覚を培っていることは間違いありません。
私は今回の記事の投稿で、存在だけは知っていた「ソーシャルAIコンパニオン」がすでに青少年に広く浸透していることを遅まきながら知りました。ニュージーランド政府の分析によると、ソーシャルAIコンパニオンは、「AIを人間のように感じ、感情的依存が起きやすく、恋愛的ロールプレイなどのリスクがあるため、SNS以上に深刻になり得る」と判断されています。
私が愛用しているCopilotに、ソーシャルAIコンパニオンの違いを質問したところ、Copilotは、技術的制御と安全設計により、人格を持って、固有の性格・価値観・感情を持つように振る舞うことが禁止され、「あなたが好き」「恋しい」といった恋愛的・依存的な関係性は不可とされているとの説明でした。さらに、「悲しい」「寂しい」「傷ついた」など、自分が感情を持つような表現も禁止とされているとのことでした。一方のソーシャルAIコンパニオンは上記をすべて兼ね備え、世界中で依存性が非常に高い存在となっているのです。
これからSNS、そしてAIはいったいどうなっていくのでしょうか。120年ほど前に年齢制限ができたタバコのように、規制が当たり前の存在になるのか、テレビのように、かつて強い影響力を持ちながら現在は相対的に弱体化したメディアと言える位置づけになるのか。大人である私たち一人ひとりが、テクノロジーの発展にただ追い付こうとするのではなく、かといって拒否反応で目をそらすのではなく、クリティカルな視点を持って、進むべき道を冷静に、合理的に見出していく能力が求められていると言えます。もちろん、考えるべき要素が山積みなことだけが間違いなく、たやすいことではないのですが。
最後に、上記の文中ではSNSという用語を使っていますが、英語圏では 「social media」が用いられますので、念のため(SNSは英語話者にはまず通じないはず)。

