天然ウール復活の兆しで、「羊の国」ニュージーランドに再び追い風が!

「ニュージーランドといえば羊。」

そういうイメージを持つ人も多いと思います。

20世紀のニュージーランドでは、羊毛は国を代表する輸出品でした。

戦後は世界中で羊毛の需要が高まり、「羊を飼えば儲かる」と言われるほど。羊毛は「白い黄金(White Gold)」とも呼ばれ、多くの農家が羊を飼育していました。

ピークだった1982年には国内の羊は約7,000万頭。人口の約22倍の羊がいました。私がニュージーランドに移住した2001年が、約4,160万頭。しかし現在は約2,360万頭まで減りました。

羊毛が売れなくなった

1990年代頃から、羊毛の需要が減り始めます。大きな理由は、ポリエステルなど化学繊維の普及、安価な衣料品の増加。そう、ウール製品の価格競争力低下でした。

利益が出なくなると、農家も経営を変えざるを得ませんでした。

酪農(牛乳)
肉用牛
キウイフルーツ
ブドウ(ワイン)
松林の植林)

などへ転換する農家が増えました。

羊を飼い続ける農家も、羊毛ではなく、「ラム肉」へと、変わって行きました。

 

しかし、羊がまた売れる時代に入ってきた

ここ数年になって、世界では再び天然繊維が見直されています。

背景には、環境問題、マイクロプラスチック問題、サステナビリティへの関心があります。

天然素材であるウールは、生分解性がある、保温性が高い、臭いが付きにくい、長持ちする、という特徴が再評価されています。

最近では、有名なブランドメーカーが、ニュージーランド産のウール採用を拡大しています。

Chanel
Patagonia
Kathmandu
Icebreaker

などがニュージーランド産ウールの採用を拡大しています。(KathmanduとIcebreakerはニュージーランドの人気アウトドアブランドです。)

そして特筆すべきは、あのシャネルが、良質な羊毛を安定確保するため、カンタベリー地方の羊毛農場へ投資したことです。

ニュージーランド政府も、この流れを後押ししています。

2026年4月、政府はフランスの高級ブランドシャネルによるセントラル・オタゴの羊毛農場「Lammermoor Station」への投資を歓迎すると発表しました。政府は、この投資がニュージーランド産ウールのブランド価値を高め、輸出の拡大や地域雇用の維持につながると期待しています。さらに、この農場を世界初の「再生型有機認証(Regenerative Organic Certification)」を取得したファインウール農場に育てることも目標に掲げています。(ニュースソース

つまり政府は、「羊毛は過去の産業」ではなく、環境に配慮した高付加価値産業として、再び世界市場で競争力を持つ輸出産業へ育てようとしているのです。

また、環境や動物福祉まで管理する「ZQ認証」を取得したウールの人気が高まっています。これは単に品質だけでなく、「どのように育てられた羊か」まで評価される時代になったことを意味します。

羊は減っても、その価値はあがっている。

現在では酪農と肉牛が家畜農家の安定した収入源となっているので、羊の数は今後も大きく増えることはないでしょう。

しかし、それは必ずしも悪いことではありません。

供給が限られる一方で、天然素材への需要は高まっています。ニュージーランド一次産業省も、羊の頭数減少と世界的な天然繊維志向を背景に、ウール価格はここ数年で回復し、今後も堅調に推移すると予測しています。

大量生産・大量消費の時代から、「良いものを長く使う」時代へ。

ニュージーランドの羊毛も、単なる農産物ではなく、「環境に優しい天然素材」として新たな価値を持ち始めています。

かつて落ち目と言われた羊毛産業が、持続可能な社会を支える素材として再び脚光を浴びている──そんな変化を、ニュージーランドは今まさに迎えています。