Netflixドラマ「Adolescence」がもたらす衝撃

翻訳担当のEikoです。Netflixで3月に公開されたとたん、世界中で話題になっているドラマ、「Adolescence」について、私が受けた衝撃をご紹介します。

Adolescenceは思春期に相当する言葉で、このドラマでは、イギリスの労働者階級の堅実なファミリーの13歳の少年が、ある日、殺人の罪で逮捕されてからの出来事を4話で描きます。私はてっきり、無実の罪でとらわれた少年を救うために、家族が戦う物語だと思っていたのですが、彼が犯人である決定的証拠として監視カメラの映像がエピソード1の最後に出てきます。

このドラマの焦点は、まだ幼く見える、かわいらしい少年がなぜ残虐な殺人を犯すまでに至ったのかを描くことにあります。私が全然知らない意味を持つ概念や価値観、例えば、自分の意志に反して独身を強いられる男性のコミュニティを指す、Incel(involuntary celibate:不本意な禁欲主義者)がキーワードとなっています。また、少年の友人は刑事と話す時に、刑事が学生時代に「クラスでPopularだったか」を何度も、執拗に聞くことに私は非常に違和感を持ちました。刑事も「Popularityが君にとって大切?」と聞くと、「もちろん」と答えます。そのときに、今のAdolescenseの世代と私では、まったく価値観や考え方が違ってしまっていることにいまさらながら気づかされました。

知らなかったのは私だけではないはずです。刑事は、少年と同じ学校に通う自分の息子に、インスタに書き込まれた絵文字の意味を教えてもらって、ようやく、被害者と少年が親しい友人関係ではないことを知ります。

私たちとまったく違う世界で今の子供たちが生きていることを理解し、ではどうしていけばいいのかを一緒に考えていかねばならないことをこのドラマは提起しているのだと思います。ただ、ドラマでは、解決策は提示されていません。ずっと「自分はやっていない」と主張していた少年は、エピソード4の父との電話で、有罪を受け入れる意向を伝えます。

そして最後に、両親は「私たちはどうしてたら良かったのか」と嘆き悲しみます。私にはもう独立した娘がいますが、「あの時、ああやればよかった」「この時、こんなことは言わなければよかった」という事柄はいっぱいあります。彼らだけに責任を課すことは残酷すぎると、胸が締め付けられる思いでした。

Adolescenceの子供を持つ親、教える教師、かかわる大人たち、そしてこの時代にAdolescenceを過ごす当事者の子供たちに、ぜひ見ていただきたいドラマだと思いました。ドラマの舞台となった英国では、スターマー首相が「父親として、10代の息子と娘と一緒にこの番組を見ていて、強く胸に突き刺さった」と発言して、話題になりました。Netflixでは、英国のセカンダリースクールでこのドラマを無料で見れるようにするとのことです(Netflixニュース)。

ニュージーランドのHerald紙でも記事になっています(2025年4月4日)。ちなみに英語圏では「SNS」の代わりに、social mediaがよく使われます(たぶんSNSは通じない)。

このドラマは、エピソード全体が切れ目なく1カットで撮影されていて、緊迫感が尋常でないです。精神的に水中で息を止めて視聴しているような息苦しさがありました。それぞれの俳優の演技も真に迫っていて、すさまじいほどです。

主人公の少年を演じたオーウェン・クーパー君のアクセントが特徴的だったので検索したら、英国ヨークシャー地方の出身で、彼のアクセントに合わせてロケ地が選ばれたとのことでした。やはりヨークシャーが舞台の「嵐が丘」の映画で、主人公ヒースクリフの少年時代を演じることが決まっているそうで、これも楽しみです。

なお、このドラマの日本でのタイトルは「アドレセンス」ですが、英語の発音としては、「アダサ(またはス)ンス」が近いように思います(太字部分にアクセント)。そして、doとsceの母音はあいまい母音である、schwa sound(私がとっても苦手な音)で、発音のいい練習になっております。

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