オークランドの喧騒を背に、フェリーに乗り込む。行き先は対岸のデボンポート。所要時間はわずか12分だが、この短い航路は、日常と非日常の境界線のようでもある。

この日は金曜日の午後。ターム1を終えた学生たちは、2週間のスクールホリデーに入ったばかりだった。ARCを通じて長期留学している学生たちに声をかけ、9人が集まった。1年目と2年目、それぞれ異なる高校に通う彼らは、この日が「はじめまして」の顔合わせ。
船が静かに港を離れると、あっという間にオークランドのビル群が遠ざかっていく。空は大きな雲に覆われていた。明日の夜には大型のサイクロンが接近するという予報も出ている。それでも、この日は穏やかだった。風はやさしく、気温はちょうどよい。まさに、嵐の前の静けさというのだろうか。

デボンポートは、オークランドの対岸に位置する歴史ある港町だ。19世紀には海軍の拠点として栄え、現在もその面影を残す。街にはヴィクトリア様式の建物が点在し、時間の流れが少しゆるやかに感じられる。
到着後、まず向かったのはMt Victoria。火山活動によって形成されたこの丘は、標高こそ高くないが、頂上からはオークランドの街並みとハーバーを一望できる。緩やかな坂道を登るあいだ、最初は遠慮がちだった会話も、少しずつ自然なものへと変わっていく。

山頂に立つと、風が心地よく吹き抜ける。この場所は、第二次世界大戦中はオークランドを守るための要塞として大砲が据えられていた。日本が敵国だった時代のこと。今こうして日本から来た学生たちが同じ場所に立っていることに、月並みな言葉だが、平和のありがたさを感じる。

山を下りる頃、空を見上げると雲はさらに厚みを増していた。それでも雨は降らない。寒すぎず、暑すぎず、ただ心地よい気温が続いていた。風もなく、穏やかさが、旅の記憶をより印象深いものにする。
山を下りてジェラートショップで一休みしていると、遅れていた学生たちも合流し、全員が揃った。デボンポートにはジェラートショップが点在しており、散策の途中に立ち寄るのも楽しみのひとつだ。冷たい甘さが、午後の時間をやわらかく彩る。

その後は海岸沿いを歩き、地元で評判のチョコレートショップを見たり、古い町並みをぶらぶら。特別な観光地を巡るわけではなくとも、ゆっくりと歩き、同じ景色を共有することで、人と人との距離は自然と縮まっていく。
こういうイベントを計画するのは、「新たな出会い」のため。
異なる学校に通う留学生同士が顔を合わせることで、自分の立ち位置をあらためて見つめ直すきっかけにもなる。日々の小さな悩みも、誰かの苦労話を聞くことでふっと軽くなることがあるし、ときには少し背伸びをして、自分を強く見せてみたり。

2年目の学生が、1年目の学生にさりげなくアドバイスをする姿も印象的だった。同じ道を少し先に歩いているからこそ伝えられる、実感のこもったものだった。
こうした何気ない交流が、留学生活に小さな刺激を与え、やがて大きな支えになっていく。

ほんの数時間の小さな旅。
けれどそこには、新しい出会いと、静かな気づきがあった。
嵐の前の穏やかな午後に訪れたデボンポートは、そんな時間をそっと差し出してくれる場所だった。
(今回は機内誌のエッセイふうに書いてみました)
ニュージーランドへ高校留学、特に卒業留学を計画されている方は、ぜひARCにお問合せ下さい。

