2025年8月4日、ニュージーランドの教育に大きな変化が発表されました。教育大臣エリカ・スタンフォード氏のもと、NCEA(全国共通教育修了資格)は、より信頼性が高く、実社会につながるものへと進化していきます。
変更の背景・主な内容・そして今後期待される効果について、分かりやすくご紹介します。
なぜNCEAを変えるのか?
NCEAは2002年に導入され、多様な学習スタイルを評価できる柔軟な仕組みとして、多くの生徒の可能性を広げてきました。職業系進路を目指す生徒にも門戸を開き、「個性を生かした評価」が実現されてきたのはNCEAの大きな功績です。
しかし近年、国内外のデータから以下のような課題が指摘されてきました:
- 学校ごとの運用のばらつきが大きく、学習内容の一貫性に欠けること
- 基礎的なリテラシー・数理能力が、NCEA取得者であっても十分とは言えないケースがあること
- 就職や進学の現場で、NCEAの実力評価が難しいとの声があること
これらの課題を踏まえ、「今のNCEAの良さを生かしながら、さらに強化しよう」というのが今回の改革の出発点です。
具体的な変更内容
主な変更点は以下の通りです:
〈1〉NCEAレベル1を廃止、より深い学びへ
Year 11の生徒は「高い評価リスク」に晒されず、学びに集中できる1年が確保されます。
〈2〉新しい2つの資格を導入
- New Zealand Certificate of Education(Year 12)
- New Zealand Advanced Certificate of Education(Year 13)
国際的な比較に耐える一貫性と信頼性のあるカリキュラムのもとで授与される資格となります。
〈3〉基礎力を見える化する「Foundational Award」
リテラシー・数理・マオリ語能力などの基礎スキルを明確に証明できる、新たな国家資格です。Year 11から導入予定。
〈4〉 科目ベースの一貫性ある学習へ
現在の「単位の積み上げ方式」から、「明確な教科・科目別の学習」へ。「何ができるのか」が、より分かりやすくなります。
〈5〉成績評価は100点満点+A~Eの明確なグレードへ
保護者・生徒・教師が、どのレベルにいるかを正確に把握しやすくなります。
〈6〉職業教育と産業界の連携強化
トレード・観光・ホスピタリティなどの分野と連携し、現場に直結するスキルを学べるカリキュラムが整備されます。
この変更はどう良いのか?
●自分の進路に必要な力を、より確実に身につけることができる
●就職・進学の際に、資格が実力を正しく示してくれる
●学びの中に「意味」を見出しやすくなり、学校への意欲も高まる
そして何より、「今よりも公平で、一貫性があり、信頼される評価制度」が実現されることで、どの地域にいても・どの進路を目指していても、同じように力を発揮できる環境が整っていきます。
今後のスケジュール
この改革は段階的に進められます。
2026年:新しいカリキュラムの導入スタート(Year 9から)
2028年~2030年:新しい資格制度へ移行(Year 11の生徒から順次)
注目したい点
特に注目しているのは、「読み書き(リテラシー)と数理(ニューメラシー)を重視する姿勢」です。
これまで、国際的な学力調査において、ニュージーランドの若者のリテラシー水準は決して高いとは言えませんでした。その大きな原因は、小中学校段階の教育で「読み書きの基本」が十分に確立されていなかったことにあります。
しかし今、ニュージーランドではこの部分に本格的なてこ入れが始まっています。新しい全国カリキュラムでは、「知識の積み上げ」と「読み書きの確かな力」に重点が置かれ、小・中・高すべての段階で、基礎力を育てる教育が進められています。
留学生にも求められる「本当の力」
新制度では、英語での読み書き力、数理的思考力といった「基礎的かつ汎用的なスキル」がより明確に問われるようになります。これらは将来、どの進路(大学進学・職業教育・就職)に進む上でも必要な力です。
つまり、今後のニュージーランド留学では:
- 単に英語が話せるだけではなく、「英語で考え、書ける」力が重要
- 日常会話では測れない「学習としての言語力」が評価される
- 留学生自身も、より本質的な学力を身につける経験ができる
これは、留学を「将来につながる真の学び」にするうえで、非常に歓迎すべき変化です。
NCEA改革は、「ニュージーランド留学の質」をさらに高める追い風になるでしょう。
基礎力を大切にし、社会に出るための力をしっかり育てていく新しい制度のもとで、海外の生徒たちも公平に学び、評価される環境が整います。
教育省発行のNCEAの変更内容はこちらかダウンロードできます。
NCEA Changes Summary for Parents
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